今年もやって来た桜の季節。
私ははらりと舞う桜のはなびらにそっと手を伸ばした。
私の一番好きな季節。
私の一番好きな花。






「ヒカリ」






愛しい人の声で振り返ると、やはり愛しい人が微笑んで立っている。
瞬間、悲しく、自嘲するように顔を歪ませるとニッコリと完璧な笑顔をみせた。






「桂太！おはよう～」




「あぁおはよう。一緒に行こうぜ」




「うん！」







ニカっと笑顔を向ける桂太に頷く。
他愛ない話しをしながら学校への数分間の道のりを二人で歩いて行く。






「もう、三年か～。早いなー…。あ、でも昨日の入学式の一年生可愛かったね」






なんか、初々しくて、と言うとお前は幾つだよ、と桂太が言って笑った。






「でもでも、特にあの挨拶してた椿って子、可愛かったよね～。お人形みたいで」




「あ、あぁ…」




「桂太？」






私が隣をみると前髪をちょいちょいといじっている桂太がいた。
彼の癖だ。
なにか後ろめたいことがある時の。