恋涙歌

彼も私の存在に気づいていた。

これは確信だった。

音楽室の窓から覗かせた顔は、たくさんの生徒たちがいる中、私を見ている。

私はゆっくりとその人方に、無意識に歩み出る。






「ヒカリ!!」





大声で名前を呼ばれて、ギュッと手を掴まれて、私はハッと我に返った。

桂太が、不安げに私の手を掴んでいた。






「え、なに?」



「なに、じゃねーよ。どこ行くんだよ。帰るぞ」



「あ、うん…」





そう言うと桂太は私の手をグイグイ引いて歩いていく。

私は音楽室の方を見た。

彼もまだこちらを見ていた。

今、彼は何を思っているのかは、離れたここからではわからない。

ただ、少しだけ、この繋がれた手を見られるのが、嫌な感じがした。