恋涙歌


その子が例の桂太の浮気相手の一年生だと言うのは一目でわかった。
同時に彼女が桂太を見つけたことで顔が緩んだのも。
しかし、桂太の方は気づいていないようだ。

行き場を失った手を見つめてブツブツ文句を言っている。

私はもう一度彼女の存在を確認すると桂太のその手をとった。

驚く桂太。





「え、ど…「やっぱ繋ぐ」…はぁ!?」





そういうと私は桂太の手をキュッと握った。





「んだよお前わっかんねぇ」


「だめ?」





普段は絶対にやらない上目遣いで彼を見上げれば、彼は少し顔を赤くして目をそらしてから、





「だめ」





とニッと笑っていった。






「え…なん「こんな繋ぎ方じゃだめ」…は?」





そういうとするっとその細い指を私の指に絡ませて微笑む桂太。






「やっぱこうじゃねぇとな」


「…バカップルみたい」


「いいじゃねぇか」





ニシシと笑う桂太に私もプッと微笑んだ。
じゃぁいくか、と言う桂太に頷くと歩き出す二人。
ふと後ろを見ればいかにも理解できないと言った表情でショックを受けている一年生のあの子が見て取れた。






「(ごめんね。)」






心の中でそうつぶやく。
自分がやっていることは相当性格が悪くて嫌味な事。
そんなことわかっている。
でもやっぱり私は桂太が好きで自分のであってほしいしそれに、彼女は私なのだ。





「(私だって、そんなにできた人間じゃないんだよ)」


「ヒカリ?」





桂太の一言でハッと顔を上げる。
大丈夫か?と心配する桂太。
平気、と微笑むとそのまま歩き出す。






「先生さよなら〜」



「さようなら」





瞬間、その声は、他の全ての音を押しのけて私の耳に入ってきた。

ほぼ反射的に私は声のする方を振り向く。






「…ヒカリ?」






桂太の私を呼ぶ声なんて耳に入ってこなかった。

ただ、視線の先に映る、想像通りの人物だけが私の視線を捉えて離さなかった。

なぜだかはわからない。こんな感情知らない。
でも私は、気がつくと桂太の手を解いてその人の所へと足を向けていた。