チャイムが鳴り、準備室のほうから先生が出てきた。
「それでは授業を始めたいと思います」
彼の一言でざわざわしていた生徒達がシーンと静まる。
「俺の紹介は…もういいよね、じゃぁみんな、教科書34ページを開いてください」
言われたとおりに教科書を開く。
内容は日本の童謡の話だった。
すらすらと教科書の説明をしていく蒼井を私はボーっと見つめていた。
静かに教科書を手に持ち話をする先生はやはり絵になる。
初めて会ったとき同様、目が離せなくなる。
ふと彼が視線を上げた。
上げた視線が自身の視線と絡み合いドキッとする。
「では日向さん、答えてください」
「へ?」
突然指され、今度は違う意味で心臓が跳ね上がる。
「…すみません、聞いていませんでした」
「でしょうね、だから指しましたから」
「え?」
にっこりと笑って言う彼に目が点になる。
きらきらと光る笑みは悪戯が成功した子供のようだ。
「ボーっとせず、ちゃんと聞いてくださいね」
「…はい」
どっと笑いが立ち上がる。
穴があったら入りたいとはこのことだろう、私は思わず顔を伏せた。
「ヒカリ…完全見とれてたよね」
「違う…」
「いや、絶対見とれてた」
違うもん、というとふーん、と由梨はそれ以上は言ってこなかった。
そんなことはない。
違う。
あるはずがない。
あってはいけない。
だけど…
「…熱い」
熱を持ったこの頬をなんと説明すればいいのだろうか?

