恋涙歌

ドアを開けて先生が入ってくると、騒がしかった教室は一瞬で静かな空間へと変わる。

事務的な話を淡々と述べる先生を見て、ふと昨日のピアノの前に座る彼の姿が思い出された。

あの、泣きたくなるくらい美しい旋律とともに。

今日、彼はどんな風にピアノの前に立つのだろうか。

どんな風にピアノの音を奏でるのだろうか。





「(早く…音楽にならないかな…)」






連絡を終え、教卓の前に座る先生を見て、そんな事を考える。


昨日の曲が耳から離れない。


美しいメロディがうるさいくらいに耳の奥でリピート再生されている。


誰かに贈られた曲。


恋の…曲。



瞬間、私は自分の胸の奥に、小さな違和感を感じた。

胸をキュッと締め付けられるような小さな、小さな違和感。

すごくよく知っているような、全く異質の、よくわからない小さな違和感を。