恋涙歌

最後に包み込むような優しい[pp](ピアニッシモ)の和音でその曲は終わった。




「す、すごい!綺麗な曲!感動!」






私は興奮して拍手をおくった。







「初めて聞いた!誰の曲ですか?!ホントに感動した!」





「これは…俺がつくった曲…」




「すごい!楽譜、楽譜あるなら下さい!」






はしゃいでそう言うと先生はくすり、と笑った。
そこで初めてちょっとはしゃぎ過ぎたかな?と思うとなんだかだんだん恥ずかしくなってきて思わず俯く。






「ははは、そこまで喜んでもらえるのなら、俺もうれしいよ」



「あ、あはは」



「でも、この曲は…あげれないんだ」


「え、なんで?」


「この曲は…俺の大切な人にあげた曲だから」





そう言って微笑んだ先生の顔はとても悲しそうだった。





「さぁ、もう帰りなさい」






どうしてそんな顔するの?
その人はどんな人?

なんて聞けるはずもなく、
私は静かに挨拶をして教室を出た。






外は既に暗い。
照らすのは僅かな街灯の光と月明かり。
時々頬をなでる春風が冷たい。

ふと空を見上げる。
先生のあの寂し気な微笑みが脳裏に焼き付いて離れない。






私はまだ知らない。
気づかない。
私の中に芽生えつつあるこの気持ちがなんなのか。

認めたくない。
知りたく、ない…。