二人がタクシーに乗って帰っていったのを見送ると先輩が言った。
「もうお客さん引いてきたし、このまま愛里ちゃんもあがっちゃって!今日は無理やり頼み込んじゃってごめんね。すっごく助かったよ」
「いえ。とっても楽しかったです」
思いのほか充実した時間だったのであたしも小さく頭をさげる。
むしろ全然お手伝いになっていなかった気がして申し訳ない。
お言葉に甘えてロッカーに戻ったあたしは、ドレスからパーカーにジーンズというラフな格好に着替えた。
髪の毛もおろして普段の自分に戻る。
愛里から『宮下優奈(みやした ゆうな)』へ。
「…さむっ」
外に出ると時間が時間なので風が冷たく吹いていた。
雨上がりらしく、夏の暑さはどこかへ行ってしまったらしい。
ジメジメした寒さが肌に障る。
駅に向かって歩いているとさっきまで一緒だった二つの人影が見えた。
「あれ?」
「…ん?誰だ、お前」
「愛里です」
「…あ?……あぁ、さっきの」
小波さんと神田さんだ。
格好にギャップがありすぎたのか、あたしの顔を怪訝そうに見つめると神田さんは小波さんを見下ろした。
