「ごめん……トモ兄今、歯、磨いてる」

申し訳なさそうに謝って、「どうぞ」と中に入れてくれた。これもいつものこと。



「いつもごめんねー、凜子ちゃん」

今度はキッチンの流し台で洗い物をしているライガのお母さんが、振り返って謝る。


ライガのお母さんは、ほんの少し膨よかで、あったかい感じの人。どこにでも居る普通のおばさんだ。これ、褒めていないかも知れないけど。でも私は大好き。



「平気です」

と答えて笑い、

「また今日も、どうせ寝癖付けっ放しの頭で行くんでしょ? イケメンが台無し」

と意地悪な言葉を付け足せば、何故だかお母さんと静江ちゃんが顔を見合わせてふふっと笑った。



「え……?」

不思議に思って小首を傾げると、

「先輩、ごめん、間に合う?」

洗面所からライガが慌ただしく飛び出して来た。



え……!