「あ、血、付いた」

言ってライガは、空いている左手で私の頬を拭う。


「いいよ、そんなの」

「あ、もっと付いた、ゴメン」

「いいって言ってんのに……」


何故だかここで、じわりと視界が滲んだ。咄嗟に、逃げるようにライガの肩に顔を埋めた。



このタイミングでまた泣くのかよ、私、と思うも、どうにも抑えきれなくて。


ライガは私の手首をそうっと放して、両腕を背中に回して包み込んでくれた。



迫り上げる感情を思う存分吐き出しながら、こんなにも愛しい人を失わずに済んだことに心から感謝した。




こんな格好で、しかもこんな夜遅くに帰ったら、きっとお母さんに、こっ酷く怒られる。


そしたら素直に謝ろう。大丈夫だったよって言おう。

大好きな人が守ってくれたって言おう。




でもまずその前に――


大好きな人が出来たよって、家族みんなに伝えよう……。