「ライガ……大丈夫なの?」

「ん、大丈夫……な訳ねぇじゃん。先輩、俺、息が苦しい。人工呼吸して」

「了解!」

キリリと返してライガの鼻を左手でキュッと摘まめば、

「ちょ、待って。先輩、それマジボケ?」

その手首を優しく包んでライガは笑う。


「そんな訳ないじゃん。冗談だよ」

そっと鼻から手を離して私も笑った。けれど、ライガは私の左手首を柔らかく握ったままで。



そして、ゆっくりとライガの顔が近付いて来た。


自然に瞼を落とせば、唇に優しい感触。ちょっとだけ鉄っぽい味がしたけど、それすらも、とろけるほどに甘く感じた。



名残惜しそうに離れたライガは、愛しげな眼差しを惜しみなく私に注ぐ。

ただそれだけで、今、世界中で一番幸せなのは私なんじゃないかって思う。


実際そうかも知れない。きっとそう。そうに違いない。