pianissimo.

開かれた道を、ライガはゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。両サイドから浴びせられる強烈な敵意にも、なんら物怖じすることなく平然と、涼しげに。



そうして、勇輝の目の前まで来て、彼と向き合った。


「久し振りっすね、ソーチョーさんっ」

言って、ライガは親しげな笑みを見せた。その明るい声音は、この緊迫した空気に全く馴染まず、やけに響き渡った。



ライガの登場に気を取られたのか、両脇の男の拘束が緩む。その隙をついて勢いよく振り払い、ライガに向かって思いっきり駆け出した。


「あ、てめっ、待てこら!」

拘束していた男のうち一人が背後で叫ぶ。その声に反応して振り返った勇輝は、彼の右横を通り過ぎようとした私を、左腕で腹を巻き込むようにして引き留めた。



ライガが目の前に居るのに触れられないもどかしさとか、その他の色々な激情とで、私の頭の中は真っ白になった。



「バカッ! ライガのバカッ! どうして来たの? バカじゃん、ライガ。バカバカバカバカバカー!」


勇輝の片腕の中でじたばたと暴れながら、『バカ』をひたすら連発する私こそ、周りから見たらきっと、呆れるほどに馬鹿で間抜けだ。