pianissimo.

怖い。誰か助けて。



周りは田んぼばかりの田舎道。民家も見当たらなければ、通行人も居ない。


そうだ、電話。電話で助けを……と思い立ったけれど、携帯電話が入った鞄は自転車の籠の中に置いて来てしまった。



全力疾走したけど、私の足は女子の中でも遅い方だ。すぐに追いつかれ、ガバリと私の上半身に男の太い二本の腕が巻き付き、そのまま抱き上げられた。

多分、大輝以外の誰か。だって大輝は左足が不自由だから。



宙に浮いた両足を交互に曲げたり伸ばしたりりて暴れてみたけど、何の効果もなく。ただ、虚しく空を切る。



腕も一緒くたに抱え込まれていて、身動きが取れない。自由が利くのは口だけ。


「放してっ! いやだ! 誰かっ、誰か助けて!」

誰にも届かないとわかっていながら、大声を張り上げた。