pianissimo.

慌てて正面に向き直ってこぎ出そうとしたけど、自転車はビクともしない。勢いよく再び振り返れば、荷台をガシと掴んでいる右手が視界に飛び込んだ。


恐る恐る、その手から腕を伝って視線を滑らせた。



「りーんこちゃんっ。俺たちと遊ぼ?」

少年のように無邪気な笑みを浮かべた大輝が、尚更恐ろしい。


「遊ばない! 放して!」

幼い子どもみたいな片言しか出て来ない。



大輝は荷台を掴んだ手を頑として離そうとはしなかった。

仕方がないから自転車を諦めて飛び降りれば、ガシャンと大きな音を立ててそれは地面に叩きつけられた。


走り出そうとしたところを、後ろから抱きすくめられる。全力で暴れてそれを振り解き、無我夢中で走った。



バタンバタン――

車のドアの閉まる音が二つ。



走りながらも振り返ったら、後部座席からも男が二人降り立ち、もの凄い勢いでこちらへ駆けて来る。