pianissimo.

けれど、数分もしない内に、

「ねぇ……ねぇちょっと」

背後から呼び止められた。



また自転車を止めて振り返れば、助手席の扉が開き、焦げ茶色の髪の彼が車から降りてきた。



「ごめん。まだ結構かかる? 実は俺ら、急いでて……」


申し訳なさそうにそう言いながら、私にゆっくり近付いて来る彼は――


左足を重そうに引き摺っていた。



途端、静江ちゃんのあの言葉を思い出す。


『脊髄損傷したって聞いた。今も左足を引き摺ってる』




「かしわばら……だいき……?」

無意識のうちに、心当たりの名前を口にしていた。



「あれー? 何で知ってんの? 俺と会ったことあるっけ?


いがらし、りんこちゃんっ」