pianissimo.





静江ちゃんと別れたらどうしようもなく寂しくなって、自転車で自宅に向かいながらも、片手で鞄の中を弄った。


取り出した携帯電話のアドレスを開いて、郁香の名前を探す。



数回のコール音の後、つながった。


『もしもーし』

郁香の弾むような明るい声に、ホッとする。


「久し振り。元気?」


郁香は就職希望。なので、夏期講習には出て来ない。

部活には通っているみたいだけど、学校で顔を合わせることはほとんどなかった。



『先週も遊んだじゃん』

郁香はそう言って笑い飛ばす。私との間にちょっとだけ温度差があるのかもしれない。


「そだね」

つられて私も笑う。



「今、家?」

『ううん。本屋で暇つぶしてる』

「涼しいしねー」

なんて……。在り来たりでつまらない返ししかできなくて。