pianissimo.

袋から取り出したのは、サンドイッチと焼きそばパン。

もうそろそろ、ご飯の時間じゃないのかな。だって病院って、夕食の配膳時間が異常に早いイメージが……。



「あの、レントゲンは行かなくていいんですか?」

サンドイッチと焼きそばパンも気になるけれど、今、最優先すべきはレントゲンだろうと思う。


「いいって、いいって。『午後レントゲン』って言われてもさ、午後は長いっつーの。なぁ?」

とここで、ヒロさんは何故だか私に同意を求める。



「うーん……。長い……かな?」

「なげぇよ! 俺、三時間四十五分待ったからね」


ヒロさんの子どもみたいな我儘が、何だか無性に可笑しくて、堪えきれずにクスリと笑ってしまう。

この目の前でサンドイッチを幸せそうに食べている彼が、未だに『ラオウ』と呼ばれて現役の人たちに恐れられているなんて、とてもじゃないけど信じられない。



「凜子ちゃんも食べる?」

と。ヒロさんは、ヤキソバパンを丸ごと私に向かって差し出す。


「いえ、結構です」

遠慮とかではなく、全力で断った。