pianissimo.





「『気を付けて』って言ったのに」




不意に頭の上に落とされた、あの懐かしい重低音。信じられない思いで、ゆるゆると顔を上げれば、ライガが私のすぐ傍に立って見下ろしていた。


金色が眩しい。けれどその奥の、私に惜しみなく注がれる優しい眼差しは、もっと眩しかった。



ライガが私の目の前にしゃがんだ。すかさず私は、四つ這いになって身を起こし、ライガにもの凄い勢いで縋りついた。

こんな機敏な動きが出来るなんて、と。自分でも驚くほどに身軽。



「行かないで、ライガ、お願い。行かないで」

無我夢中で訴えた。


ライガはまたいつもみたいに、困り果てた風な苦笑を浮かべて、

「先輩を傷付けたやつはブッ潰すって言ったろ? それが誰でも。例え先輩でも」

とても穏やかに優しく囁いた。