pianissimo．

何でもないことのように恐ろしい言葉を吐き、ライガは男の胸ポケットに手にしていたタバコをスッと入れる。


「ごちそうさん」

明るい声音で礼を言いながら、しゃがんだまま短くなったタバコを地に押し付けて火を消した。そして、左手で摘まんでいる頭の潰れたそれを、自分の顔の前にかざして、何やらじっと見詰める。



「ポイ捨て禁止、ね？」

まるで子どもみたいに無邪気な口調で言って、吸い殻も男の胸ポケット、タバコの横に捻じ込んだ。


言っていることは道徳的なのに、やることは非道。その不自然さが不気味で、一層脅威を感じる。



「……で、返事は？」

ライガがやけに落ち着いた口調で問う。男は何のことを言われているのかさっぱりわからないようで、

「な……なんの？」

と、震える声を絞り出した。