私を背後から抱きすくめた男が、難儀そうに半身を起こし、口の端から垂れている一筋の赤を左手で拭う。
まだ動けるんだ……と。そんなどうでもいいことに驚いた。
殴られた衝撃で、彼の胸ポケットから飛び出したタバコが、金髪の男の足元に落ちていた。
男はゆったりとした動きで屈み、それを拾い上げると、ソフトケースの中のライターを取り出してから、それを軽く上下に振る。中のタバコ三本が凸凹になって飛び出した。
そのうちの一本をくわえると、金髪の男は慣れた仕草で火を点けた。
俯いていて顔は見えないけど、その口元には見覚えがあった。
優しく愛しげに、そして時々遠慮がちに、私の身体全部に満遍なくキスをくれた唇だ、忘れるはずがない。
ニコチンを吸い込みながら、ゆっくりと顔を上げた男は、私の方など目もくれず、三人のうちただ一人、起き上がることが出来た男の方だけを見ていた。
その横顔は冷酷で平静で、だけどどこか獰猛で。私が見たことのない表情だったけど、間違いない。
ライガ……。
まだ動けるんだ……と。そんなどうでもいいことに驚いた。
殴られた衝撃で、彼の胸ポケットから飛び出したタバコが、金髪の男の足元に落ちていた。
男はゆったりとした動きで屈み、それを拾い上げると、ソフトケースの中のライターを取り出してから、それを軽く上下に振る。中のタバコ三本が凸凹になって飛び出した。
そのうちの一本をくわえると、金髪の男は慣れた仕草で火を点けた。
俯いていて顔は見えないけど、その口元には見覚えがあった。
優しく愛しげに、そして時々遠慮がちに、私の身体全部に満遍なくキスをくれた唇だ、忘れるはずがない。
ニコチンを吸い込みながら、ゆっくりと顔を上げた男は、私の方など目もくれず、三人のうちただ一人、起き上がることが出来た男の方だけを見ていた。
その横顔は冷酷で平静で、だけどどこか獰猛で。私が見たことのない表情だったけど、間違いない。
ライガ……。



