pianissimo.

校舎の壁に押し付けられ、両腕もバンザイの格好で貼り付けられた。


身動きが取れない私の全身を、まるで品定めでもしているような厭らしくて粘っこい視線が這う。


気持ち悪い。



「お願い。やめて」

小さく震える声しか出て来ないけど、とにかく祈る思いで懇願した。



「あいつのせいでさぁ、俺たち鬱憤が溜まりまくってんだわ。ラオウの弟だから手ぇ出せねぇし」


「ライガが、あなたたちに何をしたの?」


「何も」

男はヘラッと笑って平然と答える。


「目障りなんだよなー。消えてくれて、ほんっと良かった」

そう言って、男は私の首筋にその歪に弧を描いた唇を寄せる。


「いやだっ! やめて!」

それを何とか避けようと限界まで頭を倒した時――

何かに引っ張られたように、男がグウンともの凄い勢いで私から離れた。