pianissimo.

花壇の水遣りは相変わらず私の日課だ。



これだけ暑いと花たちもしんどいだろう。心なしか疲れているように見える。


シャワーホースから放射線状に降り注ぐ水を思う存分浴びると、みるみる生気を取戻し、悦びの唄でも合唱しているような賑やかさ――

――に映るから、おかしい。




と、不意に背後から腰を抱かれてグイと引き寄せられる。私のお腹には男のものだと分かる、頑丈そうな二本の腕が巻き付いていた。


ライガじゃない。ライガはこんな乱暴にはしない。

じゃあ……誰?


振り返るようにして見上げれば、アーモンドみたいな形の目から注がれる、冷ややかな侮蔑を帯びた眼差し、明るめの茶色い短髪が視界の端に映った。

そして、きつい香水の香りが私の鼻を突き刺す。