pianissimo.

「良かった?」


部屋に入るなりライガが聞く。後ろ手に扉を閉めながら「何が?」と聞き返せば、どうしてだかライガは困ったような苦笑を浮かべた。


「俺、上げて貰うつもりなかったから。何の考えもなく来ちゃったって言うか……。やっぱ、家族が居るような時間はまずかったかな?」

「ううん。全然。嬉しいよ、嬉しいに決まってる」

そう答えて、頑張って笑ってみたけど巧く笑えなかったみたい。



「今日の先輩、ちょっといつもと違う。何かあった?」


心配しているというより不安げなライガの眼差しが痛い。いつもだったら、こんな風にライガが私を気遣う優しさに、癒されて救われているのに。


やっぱり、今日の私はいつもと違うのかも知れない。



全てを見透かしてしまうライガだから、きっと私の表情から、この不安定な気持ちもすぐに察してしまう。自分からライガに抱き付いて、厚みのある胸に顔を埋め、

「来てくれてありがとう」

と。今の想いのほんの一部だけを伝えた。