pianissimo.

サンダルをつっかけて玄関の扉を開けるとすぐ、門から一歩足を踏み入れた所に遠慮がちに佇むライガが居た。


たちまち、ハンバーガーショップで電話越しに聞いた姫花ちゃんの声が、頭の中に鮮明に蘇って強烈に響く。思わず、その場から逃げ出したい衝動に駆られた。



「先輩……どうした?」

まるで何事もなかったように涼しげ、そしていつも通り優しいライガ。心配そうに私の顔を見詰めて問う。


「それはこっちのセイフだよ。ライガこそ、どうしたの?」

この動揺を何とか誤魔化そうと、笑いながらちょっと意地悪に言い返す。ライガは、ははっと短く小さな笑い声を上げ、「だな」と言って照れ臭そうに顔をくしゃりとさせた。



「急に会いたくなって。つーか、いっつも会いたいけど、そういう訳にもいかねぇし」

艶やかな瞳で私を真っ直ぐ見詰めて、ライガはスルリとそんな言葉を口にする。


自然に、吸い寄せられるように……。ライガとの距離を詰めれば、ライガはまた、いつかのように軽く握った右拳で、私の頬にそっと触れた。