pianissimo.

「あっ、来た来たー」

私を見付けるなり、姫花ちゃんが声を張り上げた。罪悪感のせいか、弾ける笑顔に怯む。思わず足を止めた。


姫花ちゃんの隣には当然だけどライガが立っていて。何を考えているのかさっぱりわからない無表情。不機嫌……そうだ。



今すぐ自転車に跨って、走り去りたいと思った。



姫花ちゃんは軽やかに駆け寄ってきて、自転車のハンドルを、まるで受け取るように自然な流れで私から奪い取り、その場に突っ立ったままのライガの元へと戻る。

渋々、重い足をひきずるように動かし、その後を追った。


肩甲骨が隠れるぐらいの長さの綺麗な栗色の髪。姫花ちゃんが歩を進めるたび、肩の上で弾み、それはまるで花びらが舞っているみたいに可憐に映る。



「凜子先輩と帰るって聞いたからさ。私も一緒に」

キラリ、屈託なく笑って姫花ちゃんはそう言った。