「もういいの? 携番」


振り返って、意地悪くそんなことを言ってやれば、「よくない」と即答。


また、二人の小さな笑い声が弾けた。



鞄から携帯電話を取り出して、元の体勢に戻った。ライガは空いている右腕を、再び私のお腹に巻き付ける。そうしてグイと自分の方に引き寄せ「お帰り」、と小さく呟いた。


「ただいま」

と返してまた笑う。何でもないやり取りが楽しくて仕方がない。



お互いに携帯電話の自分情報を交換し合った。確認のために電話帳を開いたけれど、『ラ』のところにも『ナ』のところにも、それらしい名前は入っていない。


『ナルセライガ』……だったよね?



「ねぇ、ライガの入ってないよ? 失敗したのかな」

「ああ……、多分、『オ』のとこ」