「後ろ姿は完全に、女の子だった
よ。だってあたし、最初輝流の彼
女かと思ったもん」

―――“彼女”

あたしがそう口にした瞬間、
部屋はびっくりするほど一気に、
静まり返った…。





……………え…な、なんで…?



「お兄…ちゃん???」

「………ん? 何?」

―――顔は…“表面上”は
笑ってるけど、目は―……



………全然笑ってない。


「何か…ごめん。余計なこと言っ
たかも」

「美華、遥のこと、知ってるの?」

「………え?し、知らないよ…?
知らないから聞いてるんだよ」

何か…こわい…。


どこが、とかないんだけど。

こわい―…。


「―――じゃあ質問の仕方、変え
る。遥のこと、“どこまで”知っ
てるの?」

―――やっぱりお兄ちゃんの目は
笑ってなんかいなくって―…。


ほとんど同じ質問を、
繰り返された。



“遥のこと、どこまで
知ってるの?”

―――ねぇ…お兄ちゃん。


その言い方だと、

“自分は知ってるよ”
って言ってるのと、

大してかわりないことに、
気づいてる―…?