女性トイレの個室に入っている時にそんな話題が地下の食料品の人達の会話に聞こえたことがあって、私はその場でゲラゲラ笑いそうになってしまったのだ。危なかった。もう少しで本当に噴出すところだった。
人にはかなり気を遣って働いたから、周りの信用も得て、販売員としての私の評判は悪くはない。その状況に満足し、私はますます愛想良く接することを決める。
今の所は、私の思い通りにすすんでいる。それは私の気分をえらく上昇させていた。
遅番で入った5月も最後の土曜日。出勤した私は早番が売った商品の品だしをしようと、私物鞄を直して立ち上がって、大野さんに声をかける。
「ストック行ってきまーす」
「はい、お願いします」
大野さんが頷いて、袋と品だしメモをくれた。
チラリと『ガリフ』のほうを見ると、斎がバイトの女の子に指示を出しているのが見えた。
お客様の邪魔にならないように気をつけて、百貨店の隅にある、洋菓子と和菓子が共同で使っている在庫の倉庫まで歩いていく。珍しく誰もいなくて電気が消えていた。
「えーっと・・・・ボヌール3個、茶紙少々・・・」
メモをスチール棚に貼り付け、声を出しながら商品を紙袋に入れていく。包装紙は重たいので、力を入れないと中々取れないのだ。くそ、と呟いて思わず舌打をしてしまった。でも仕方がない、これを取り出すのが私の目下の仕事なのだから。
狭い棚の間には床にもダンボールごと商品が置いてあるので、身をよじって立っているので余計力が入らない。



