酸いも甘いも噛み分けたような強かな女性ならあえてこちらからは口出しもしないでおくが、まだ子供のような清純な女性ならば助けてあげねば、と決心する。
アイツが、その子にはいい人間になるとは思えない。人間の性格はそう簡単には変わらないし、あの男の根性の悪さは既に筋金入りであることが判っているのだ。
お弁当の蓋を閉めて、反応を伺うようにこちらをじっと見ていた友川さんにコーヒー飲む?と笑いかけた。
少しずつ噂を流していて、そろそろ1週間経った。私がこのデパ地下に勤めだして、約半月。
私は売り場にも慣れてきて、どうにか包装も店長のオッケーを貰えるようになり、売り場には一人で立てるようになっていた。
通販でそろえた家具や道具で一人暮らしの部屋も一応は自分好みに完成していたし、お金はないのは変わらなかったけど、まずまず平穏な日常になってはいた。
斜め前の店で働く斎のことは極力無視していた。あっちもそうすることに決めているらしく、職場では愛想のいい斎が私にだけは挨拶もしてこない。それはそれで目立ってはいたが、元カノ元カレの関係であることは皆が知っているので、それだけが噂されることはないようだった。
お互いに話はしないままで、それでも私は毎日のように会う人会う人に守口斎のだらしない面や、マイナスの印象を持つ話をし続けていた。
これを、継続は力なり、という言葉に変えてみせるのだ。あれを地でやりたい。
目立つ上に売り上げもいい守口店長のブラックな話は皆が聞きたがり、私がソフトに話したことは尾びれも背びれもひっつきまくって更に流され、期待したとおりの悪人に仕立て上げられていた。



