私は腰に手をあてて、笑顔のまま彼を見上げた。

「それでいいわ。あなたに、私を、全部あげるんだから」

 彼は一瞬、驚いた顔で停止した。

 暫く言葉を忘れたかのように無言でいて、そしてやっと少しだけ笑った。

「・・・ホテル、俺のとこ、それともここで?」

 私は彼の後ろに手をのばし、玄関のドアをしめた。

 そして部屋の中の窓も全部閉めると、新しいのに付け替えて貰ったクーラーのスイッチをいれ、汗を拭いて、汚れた手と顔を冷たい水で洗った。

 そして部屋の真ん中に立って、Tシャツもショートパンツも下着も次々脱ぎ、全裸になって振り向いた。

「用意、出来たわ」

 腕を組んで壁にもたれ私のやることを見ていた彼が、ゆらりと壁から身を離して部屋に入ってきた。

 私は裸のままで歩いていき、まだ無表情で見下ろす彼の首筋に両腕を回して抱きつき、見上げた。

「・・・・本当に、キスはなし?」

 ゆっくり、ゆっくりと、桑谷さんが微笑する。

 裸の腰に両手を回して私をしっかりと引き寄せ、彼は、なんてこった、と呟いた。

「―――――俺としたことが」

「ん?」

「・・・君に、振り回されっぱなしだ」


 そして、ゆっくりと丁寧な、熱くてとろけるキスをくれた――――――――――