太陽は高く上がり、8月最後の週、平日の昼間、窓もドアも全開にしてペンキの匂いを部屋から追い出していた。
白いTシャツを胸の下でくくって止め、ヒップハングのショートパンツを穿いた身軽かつ露出度の高い格好で、私は汗をダラダラかきながら、玄関前の床を雑巾掛けしていた。
短い玄関前の廊下をせっせせっせと拭いていく。この雑巾かけが終わったら、私の引越し作業は全て完了だ。やっぱり3日くらいはかかるものね、そう思いながら手を動かしていく。
たたきまで辿り着いた時、開けっ放しの玄関ドアの横に大きな黒い靴があるのが視界の端に映った。
「―――――――」
靴、だ。
それも、デカイ。
私は床に這いつくばった姿勢のまま、視線を上に上げていく。
ダメージデニムの裾、それにくるまれた足、腰、黒い袖なしのTシャツ、を順に目で追い、最後に、無表情で見下ろす桑谷さんの顔を見た。
両手の親指をジーパンのポケットに引っかけて、桑谷さんが立っていた。
彼は黒目を細めて口元を引き結んでいる。
私はそれを黙って見上げた。
「―――――――見つけた」
彼が言った。
低い声だった。機嫌が悪いのがハッキリと判った。



