隣をぶらぶら歩きながら、桑谷さんは手をヒラヒラと振った。
「・・・・君に断られたし、暇で時間もあったから、守口をつけようと思って外で待機してた。そしたら君と待ち合わせしてたのが判って、何かが起きてるなと判った」
「―――――斎をつけたんですか」
知らなかった。そんなに気が散っていたとは思わないが、全然気付かなかった。
「君達がホームで突っ立って話してた時は困ったな。人気がないから俺も気付かれると思って、隠れるのに時間もなくて。ラーメン店から出てきたら君の表情が柔らかくなっていた。そして笑顔で守口と話していた。・・・影で見ていて妬けたな」
斎が謝ってきたのだ、と説明した。お金も全額返すと。
「謝らせることが私の最終目的だったんです。あいつの社会生活をぐちゃぐちゃにするよりも、とにかく私は謝って欲しかった。それがいきなり達せられて、かなり浮かれていたんです」
まさか、その後で神社で刃物で襲われるとは思わなかった。
桑谷さんが頷いた。
「ヤツは完全に君を殺すつもりだったんだな。だから、何でも言えたのかもしれない。部長の娘さんとの仲を壊されたのがよっぽどムカついたんだろう」
「・・・助かりました。昨日は、本気で。今更だけど、ありがとうございます」
アパートが近づいてきた。
私の部屋の前で送ってくれたことにお礼を言う。



