女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



「君に惚れてしまったから、手にいれたくなった」


 体が発火したかと思った。

 いきなり恥ずかしくなって、私は反対向きに転がった。心臓がドキドキ言っている。

 真っ直ぐな告白は、心臓に悪い。

 桑谷さんは掠れ気味の低い声で続けた。

「君は思ったよりドライだったし、全然媚ないし、会話もさばさばと正直な反応だった。この女性を抱いたら、どんな顔をするんだろうと思わせる淡白な表情で飲んでいた。しかも・・・・何てことないみたいに、不感症かもしれません、なんて・・・」

 ・・・・・言った。

 確かに、私言いました。

 あの時は、本当に全く、なんとも思ってなくて。いいました、たしかーに。私は自分の頭をハンマーで叩きたくなる衝動に耐えた。

 何てこと言ったのよ、私ったら!

「・・・だから、余計に興味が沸いたんだ」


 眠気が吹っ飛んだ。


 私は無言でむくりと起き上がって、鞄とカーディガンを持った。

 むき出しの床にヒールの音を響かせながら、ドアに向かって歩いていく。

「・・・・おい?」

 入口にたどり着くまでに、桑谷さんの長い足が出てきて邪魔をした。