女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



 苦笑してしまった。・・・笑わない彼女。そうだろうなあ、もう最後の方は、斎と一緒にいても疲れるばかりだった。セックスも拒んでいたし、デートらしいデートもしてなかったし。

 しかし、つけられていたとは。人間て気付かないものなんだ・・・。ちっとも知らなかった、誰かに見張られてるなんて。

「ブサイクな顔してたわけですね」

 私の返答に彼が笑った。

「いや、楽しそうではなかったけど、綺麗な女だと思ったよ。髪形が違うから今と印象が全然違うけど。・・・俺は、今の方が似合うと思う」

 私はボブにして黒毛にした髪を指で摘んで、パラパラと顔の上に落とす。

「・・・それはどうも。あれは斎の趣味だったから」

 ふん、と鼻をならす音がした。

「とにかく、君が結構前からの彼女だという事が判った。それで、部長の娘さんとは浮気状態だとハッキリしたんだ。それなのに―――――」

 ある時からパタッと君の存在が消えた。4月くらいから、守口は部長の娘さんとしか会ってないようだった。いつ別れたのかはっきりしない。それに君の姿が消えてしまった。どうなってる?って気にしていたら―――――――――

「していたら?」

「突然、うちの百貨店の洋菓子売り場に君がいた」

 ・・・ああ。私はふっと笑う。入院していて、その間は確かに姿が消えていたはずだ。そして復讐を決意し、退院したらすぐに行動を起こしたのだった。

「驚きました?」

「ああ、驚いたね。何度も見間違いかと確認した。でも君だ。販売員の格好で、接客をしていた。守口の店の前で」