苦笑してしまった。・・・笑わない彼女。そうだろうなあ、もう最後の方は、斎と一緒にいても疲れるばかりだった。セックスも拒んでいたし、デートらしいデートもしてなかったし。
しかし、つけられていたとは。人間て気付かないものなんだ・・・。ちっとも知らなかった、誰かに見張られてるなんて。
「ブサイクな顔してたわけですね」
私の返答に彼が笑った。
「いや、楽しそうではなかったけど、綺麗な女だと思ったよ。髪形が違うから今と印象が全然違うけど。・・・俺は、今の方が似合うと思う」
私はボブにして黒毛にした髪を指で摘んで、パラパラと顔の上に落とす。
「・・・それはどうも。あれは斎の趣味だったから」
ふん、と鼻をならす音がした。
「とにかく、君が結構前からの彼女だという事が判った。それで、部長の娘さんとは浮気状態だとハッキリしたんだ。それなのに―――――」
ある時からパタッと君の存在が消えた。4月くらいから、守口は部長の娘さんとしか会ってないようだった。いつ別れたのかはっきりしない。それに君の姿が消えてしまった。どうなってる?って気にしていたら―――――――――
「していたら?」
「突然、うちの百貨店の洋菓子売り場に君がいた」
・・・ああ。私はふっと笑う。入院していて、その間は確かに姿が消えていたはずだ。そして復讐を決意し、退院したらすぐに行動を起こしたのだった。
「驚きました?」
「ああ、驚いたね。何度も見間違いかと確認した。でも君だ。販売員の格好で、接客をしていた。守口の店の前で」



