私は一度起き上がって、ビールを手に取り残りを飲み干した。そして慎重に瓶をサイドテーブルに置いて、またごろんと転がる。
「大丈夫か?」
彼の声に、手を垂直に上げて応える。
「はい、大丈夫。何てバカだったの私!って、一人反省会してただけです。どうぞ続けて」
彼は苦笑する。
「・・・判った。でもビール、まだ必要だったら言ってくれ。えーっと・・君が気になっているだろう5月のことだ。守口と俺は飲みに行った。それは、偵察だったんだ」
私は目を開けて彼を見詰める。5月の飲み。斎があの神社で行っていた、桑谷に関すること、のあれだ。あの一言で、私の中で桑谷さんに対する不信感が生まれたのだった。
彼は時々考えるような顔をしながらゆっくりと話す。
「今までの女性が絡んだ話を聞きだせるかと思って、催事の打ち上げの時に小林部長から守口に紹介して貰って、二人で飲みに行ったんだ。結局ヤツは口が上手くて、のらりくらりとかわしてうまくはいかなかったけどな」
守口は転職もかなり多い。それを遡って調べるのが手間だった。だけど調べていたら、近々の彼女として君が登場した。
――――――――あら、私?私は寝転がったままで声を出す。
「・・・私のこと、前から知ってたの?」
桑谷さんがデスクから腰をあげて冷蔵庫まで行き、ビールを取った。
「うん。一度守口をつけた。その時に君が一緒にいた。笑わない彼女だなーっと思ってた」



