その場で振り返って、デスクにもたれかかって私を見た。
「・・・実は」
私の反応を心配するような目をしていた。
「俺も転職組みなんだ。・・・・以前は、警備会社と調査会社にいた」
カチリと私の頭の中でピースが嵌った音がした。
あの身のこなし、油断のない顔つきと視線、状況把握能力や獰猛な目が、それを証明していた。
階段で助けられた時の事を思い出す。降ってきた私に驚くより先に、周囲を確認して、逃げて行く斎に気付いていた。
・・・警備会社。そして、しかも、調査会社にまで。
何だ―――――――この人、その道のプロじゃんか。
何でそんな男が魚屋さんなのよ・・・似合ってるけど。百貨店の鮮魚売り場での格好を思い出して、私は段々と可笑しくなってきた。
じっと私を見ていた桑谷さんが、どうやら私が笑っているらしいと気付いて、おーい、と言った。
「・・・・どの辺りが、笑うとこだった?」
くっくっくっくとお腹と口元を押さえて笑う私が、ベッドサイドにビールを置いてベッドに転がっているのを、不思議そうに見ていた。
「あはははははは」
もう我慢しないで全開で笑う私を、頭に手をあてて見ていたけど、呟いた声は呆れていた。
「・・・泣いたり笑ったり、忙しいお嬢さんだな」



