目的の店を発見して、もう一度息を深く吐く。

 店頭で帽子を被った販売員に微笑みかけた。

「すみません、求人の面接に来ました小川と申しますが」

はい、と笑顔で振り向いた女性にそう告げると、はーい、お待ちしてました、とカウンターの奥から40代とおぼしき女性が出てきた。

「急な面接に協力していただいてありがとうございます。じゃあ、行きましょうか」

 お願いね、と店頭の販売員に言って、店長らしき女性は上着をきて帽子を取り、私を促して歩き出した。

 面接・・・ここでちょろっとするんじゃないんだ。後ろをついていきながら前を歩く女性を観察する。

 口角の上がった綺麗な笑顔だった。店長職長いのかな。すっきりとした後姿。第一印象は悪くなかった。

 まあ、斎の例もあるし、人は見かけで判断しちゃあいけない・・・。痛い目にあったばかりなんだから、そこは抑えとかなきゃね。

 百貨店と繋がっている商業ビルのカフェに入り、コーヒーをご馳走になった。

「初めまして、私、店長の福田といいます」

「小川まりです。宜しくお願いいたします」

鞄から電車の中で慌てて書いた履歴書を出す。揺れる車内で綺麗な字をかくことだけに集中して、割合いい出来だったと自分でも思う。

 はい、失礼しますね、と言って福田店長を履歴書を読み出した。住所と年齢、簡単な基本事項(一人暮らしか、結婚が近いとかではないか、等)を確認して、ふと顔をあげる。

「一人暮らしで、ここのアルバイトで暮らしていけるの?」