私は闇の中に浮かび上がるその輝きを見詰めたまま、そっと言った。

「―――――――・・・・斎、その意味、判ってるの?」

 私の声は震えていない。今は体が緊急時に備えてアドレナリンを出しているんだ、と判っていた。

 ヤツが鞄の中から出したのは鋭く尖ったナイフだった。その鞘を外して捨て、斎は私の前に立っている。

 鋭利なアーミーナイフを右手に掴んで、斎が、ああ、と答えた。

「・・・だから、これからの分だって、さっき謝っただろう?」

 ねっとりとして、暗くて低い声だった。

 風や気温が暑いせいだけでなく、私は全身に汗をかいていた。

 ――――――相当キてるわ、この男。

 階段の時よりも倉庫の時よりも直接的な殺意を感じて私はそろそろと後ずさる。前回のように事故に見せかけようとは思ってないのが判った。

 偶然を装うのではなく、もう自分の手でやると決めたのだろう。

 ギラギラとしたヤツの両目は私からぶれることがない。

 私の生存本能が危機を知らせていた。

「全部うまくいっていたのに。・・・・お前が現れるまでは」

 ぼそりと斎が呟いた。暗い暗い声。私の背中を汗が流れたのを感じる。

「・・・お前が・・・余計なことを色々広めたのは判ってんだ。俺はちゃんと警告もした筈だぜ。なのに、お前が止めないから」

 言っていることはまるで子供の泣き言だけど、やっていることは残念ながら酷く大人だった。手にはナイフ。そして人気のない神社。

 私は斎を見詰めたまま、反射的に動けるようにと、深呼吸をして体から力を抜いた。