暑い中の冷えたお茶は本当に美味しい。クーラーも効いていて、汗がひいていくのが判った。
斎に謝られたことでいきなり心が軽くなっていた私は、視界が開けて丘の上から遠くを見渡しているかのような開放感を味わっていた。
目的が達成されてしまって、私の気持ちは晴れやかに。そこにきてこの冷えたお茶だ。それはもうかなりの心地よさだった。
「―――――お金は」
斎が小さな声で言った。
料理をする音とテレビの音で、周囲には聞こえないだろうというくらいの声で。
「お前の部屋で渡すよ。もうここは近いし、送っていったついでに」
鍵を替えた部屋に住んでいるのに、そこに斎に入ってこられたんじゃ意味がない。私は首を振った。
「・・・送ってもらう必要はないわ。本当に近いし、大丈夫。食べた後に銀行に寄るんでしょ、ならお金はやっぱり振り込んでくれない?」
斎はじっとこちらをみていたけど、ため息をついて目を閉じると頷いた。
「―――――――・・・判った。じゃあ、口座教えてくれ」
私は鞄からメモ帳とボールペンを出して、支店名と口座番号を書いて斎の前に滑らせた。
「・・・じゃあ、41万、宜しく」
黙ってメモを取った斎はそれをポケットにしまった。
「はーい、お待ちどおさま!」
賑やかに登場したおばさんが、出来たてのラーメンを前に置いてくれる。



