「私はお腹空いてないのよ!」
「俺は空いてんだよ!それにお前、金の返済も済んでないだろ!」
改札を出ても、まだ斎と言いあいをしていた。端的に言うと、私は多いに混乱していたのだ。だから本気で力をいれてやつの腕を振り払ったりなどは出来なかった。
驚愕だ。謝られてしまったってことに。
それが最終目標ではあったけど、まさか、電車の中でこんなあっさりと願いが叶うとは思ってなかった。
本当に駅前の、懐かしい中華料理屋まで歩く。
ガラガラと引き戸を開けて二人で続けて入った。
「いらっしゃ―――・・・あら!」
店のおばさんがパッと気付いて笑顔になった。
「まあまあ久しぶりねえ!元気だったの、二人とも?」
エプロンの前で手を拭いて出てきたおばさんと斎が楽しそうに話している。この男は本当に愛想がいい――――――私以外には。
私は先にカウンターの席に着き、厨房の中から覗いて手を振っていたおじさんに醤油ラーメンを注文した。
「あ、俺も。それと、チャーハン」
バタバタと隣の席に来て、斎がカウンターから厨房に向かって声を張り上げた。
あいよ、とおじさんが返事をして、おばさんが冷えたお茶を出してくれた。
それを二人で飲んで、ほーっと息をつく。



