女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



「・・・そんなに驚かなくても。俺だって悪いと思えば謝る」

 私の反応に苦笑して、斎がそう言うのと、電車が駅に入るのとが同時だった。

 呆然としたままだったけれど、私は開いたドアをいつもの習慣で降りる。この駅で降りる人は少なく、ホームは人影もまばらだった。

 電車のドアが閉まって発車する。私はホームに突っ立ったまま、振り返って斎を見た。

「・・・・本気で謝ってるの?」

「何だよそれ」

「信じられなくて」

 斎が困った顔をした。頭の後に手をやって、ガリガリとかく。

「・・・これ以上、俺はどういえばいいんだ?」

 風が吹き通る電車のホームで、他には誰も居なくなっていた。私は前に立つ斎を見詰める。やつも私を見ていた。

 ・・・謝った、んだ、この男が。・・・私に。

 頭を振って、私はもういいと呟いた。

「判ったわ、もういい。許してあげるから、ここでバイバイしましょ」

 へ?とマヌケな顔をして、斎が首を捻る。

「ここでバイバイって。だって、ラーメンは?」

「・・・一人で食えよ」

 私の言いように唖然とした顔をしたが、いいから食おうぜと強引に引っ張っていかれた。