「・・・そんなに驚かなくても。俺だって悪いと思えば謝る」
私の反応に苦笑して、斎がそう言うのと、電車が駅に入るのとが同時だった。
呆然としたままだったけれど、私は開いたドアをいつもの習慣で降りる。この駅で降りる人は少なく、ホームは人影もまばらだった。
電車のドアが閉まって発車する。私はホームに突っ立ったまま、振り返って斎を見た。
「・・・・本気で謝ってるの?」
「何だよそれ」
「信じられなくて」
斎が困った顔をした。頭の後に手をやって、ガリガリとかく。
「・・・これ以上、俺はどういえばいいんだ?」
風が吹き通る電車のホームで、他には誰も居なくなっていた。私は前に立つ斎を見詰める。やつも私を見ていた。
・・・謝った、んだ、この男が。・・・私に。
頭を振って、私はもういいと呟いた。
「判ったわ、もういい。許してあげるから、ここでバイバイしましょ」
へ?とマヌケな顔をして、斎が首を捻る。
「ここでバイバイって。だって、ラーメンは?」
「・・・一人で食えよ」
私の言いように唖然とした顔をしたが、いいから食おうぜと強引に引っ張っていかれた。



