電車の中で斎が聞く。
「なあ、お前本当に桑谷さんと付き合ってないのか?」
職場を離れて砕けた口調になった斎に、私はうんざりした顔をみせる。
「・・・しつこいわね。桑谷さんは好きではいてくれてるようだけど、私はあんたのせいで男はもうこりごりなのよ」
「―――――酷い言われようだぜ」
「あんた、私に何したか判ってんの?特に最後に言われた言葉に傷ついて、男性なんて信じることが難しくなったわ」
・・・そして、復讐を誓ったのよ。と胸の中で付け加える。
すると窓の外を向いていた斎が振り返り、私を見て真剣な表情で言った。
「―――――悪かった」
「え?」
ビックリして固まった私を見て、小さな声で斎が続けた。
「・・・・俺も反省した。俺の口が悪いのはお前は判ってるし・・・まさか、あんなことをするほどに傷つけたとは思わなかったんだ。そんなに傷つくとは。今は、考えれば考えるほど自己嫌悪に陥っている」
私は目を見開いて、目の前に立つ男を見ていた。
・・・・・謝った。この男が。悪かったって、今・・・謝った・・・・。
頭が真っ白だった。
まさか、斎がそんなことを。



