女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



 電車の中で斎が聞く。

「なあ、お前本当に桑谷さんと付き合ってないのか?」

 職場を離れて砕けた口調になった斎に、私はうんざりした顔をみせる。

「・・・しつこいわね。桑谷さんは好きではいてくれてるようだけど、私はあんたのせいで男はもうこりごりなのよ」

「―――――酷い言われようだぜ」

「あんた、私に何したか判ってんの?特に最後に言われた言葉に傷ついて、男性なんて信じることが難しくなったわ」

 ・・・そして、復讐を誓ったのよ。と胸の中で付け加える。

 すると窓の外を向いていた斎が振り返り、私を見て真剣な表情で言った。

「―――――悪かった」

「え?」

 ビックリして固まった私を見て、小さな声で斎が続けた。

「・・・・俺も反省した。俺の口が悪いのはお前は判ってるし・・・まさか、あんなことをするほどに傷つけたとは思わなかったんだ。そんなに傷つくとは。今は、考えれば考えるほど自己嫌悪に陥っている」

 私は目を見開いて、目の前に立つ男を見ていた。


 ・・・・・謝った。この男が。悪かったって、今・・・謝った・・・・。

 頭が真っ白だった。

 まさか、斎がそんなことを。