体も心も軽くなった感じがした。

 窓を開けて扇風機を回す。

 汗をだらだらとかきながら、真夏の街が遠くで霞むのを窓側からみていた。


 恋をしちゃった・・・。呟いて、一人で笑う。

 ある程度の復讐は斎にした。全てではないがお金も戻ってきたし、謝って貰ってはいないけれどもあの男の思惑は全部壊した。

 アイツは今、確実に不幸の中を漂っている。何もかもが思い通りにいかなくてイラだっているはずだ。そして私は男性と恋に落ち、手の中では希望がキラキラと光っている。

 小さな小さな輝きでも、確かにそこにあることが判った。

 もう男を好きになんてなれないんじゃないかと思っていた。

 こんな穏やかな気持ちにはなれないのではないかと。

 甘くなってしまった体を自分で抱きしめる。

 ・・・・・良かった、また愛されて。良かったね、私。斎が吐いた暴言は、桑谷さんが流してその穴を埋めてくれた。

 あの力強さと率直さで。


 冷たい水を飲んで、顔を洗う。

 真っ白な気持ちになった私が、鏡の中で笑っていた。