「――――――目を開けて、俺を見て」
声は聞こえているけれど、快楽に流されてちゃんと反応ができない。ただ体を震わせてこみ上げる激しさに声を上げていたら、突然、動きが止まった。
満たされない体が泣き声を上げる。霞んだ瞳を無理やり開けて彼を見たら、目を細めて汗を流した桑谷さんが口元だけで笑った。
私はこんな状態なのに・・・まだまだ余裕気なその表情に悔しさが生まれる。
「目、閉じたらダメだ。俺を感じてるんだって判らせて」
「・・・・・」
「返事は?」
強く突き上げられて、思わず声が出た。力が入らない。何とか頷いて、また動きを止めてしまった彼に小さな声で言う。
「・・・は、い」
「聞こえない」
「はいっ・・・」
軽いキスをして、彼はゆっくりと微笑む。そしてまた動き始め、私を完全に支配した。
夏の夕方、私の部屋の狭くて小さな玄関は、世界中のどこよりも、やらしくて、激しくて、熱かった。
全て終わった後、まだ整わない呼吸の中、切れ切れに、彼が言った。
「・・・謝らねーぞ。俺は人が好くて優しい男なんかじゃない。貪欲で、我儘な、33歳の男だ」



