女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



 小さなテーブルを挟んで座り、ビールを飲む。喉をみせて大きく呷る桑谷さんを見ていたら、この部屋に斎以外の男が・・・と思って不思議な気分になった。

 斎意外の男の人が入ったのは、初めてだ、よく考えたら。

 酔いだした視界で、つい、缶を持つ大きな手や、喉仏の辺りや、後ろにすいてサムライヘアーにくくっている髪の毛の後れ毛なんかを見詰める。

 あら、こんなところに素敵な喉仏と顎のラインが。そんなことを思って一人でおかしくなった。笑いは何とか飲み込んだけれど、目は中々離せない。

 ・・・・・ヤバイ。さっきまではなかった色気を感じ出している。

 そして、頑張っているけど目が離せない。

 ・・・・ってことは、当たり前だけど、私も―――――

「・・・その目で見るの、止めてくれる」

 低い声でそう言って、桑谷さんが缶ビールの淵からこちらを見た。

 私は謝りはせずにただ微笑する。

 ・・・やっぱり。やらしい目で見ていたに違いない。ううーん。ヤバイ、このままでは確実に―――――――――

 そういえば、女は30代が、一番エロイとどっかで読んだなと、ぼんやりした頭の片隅で考える。それは生物学的なことで、最後に子供を一人でも多く産もうとする為に体がそのようになるんだ、とか何とか。ちなみに男が一番性欲旺盛なのは17歳や18歳らしいけど。

 女友達の一人なんか、最近男をみるたびにこの人とセックスが出来るかどうかをまず考えてしまうの、って困っていた。

 好きとか嫌いとかではなく、その前に、男性としての色気をみてしまうんだと。

 ――――――――そして、私は30歳の独身。まさしく、今、その状態。