女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~



 顔がほてってきたのが判ったけど、何てことない声で言った。

「嫌だって言ったら諦めます?」

『―――――次に乞うご期待』

 めげないってことだよね、それ。と思ったら可笑しかった。

「ふふふ・・・。どうぞ、狭い部屋ですけど」

『え、いいの?』

 驚いた声が飛び込んできた。自分で言っておいて、なぜ驚くのだ。私は何度か瞬きをした。・・・・この人、私を抱いたのと同じ男よね?繊細な問いかけや反応にビックリする。

「私はもうご飯も済ませたんですけど・・・。簡単でよかったら、何か作ります」

『・・・・』

 反応が面白くて笑いながら言うと、返答がなかった。

「桑谷さん?」

『・・・・いや、感動して。ありがとう。すぐ行きます』

 電話が切れて、私はそれをちょっと呆れて見つめた。感動って・・・何を大げさな。

 ビールを飲み干して台所に向かった。

 食事の用意を始めなきゃ。人のために食事の準備をすることにうきうきしているのを、自分では気付かないふりをした。

 約40分後、チャイムが鳴る。

 心臓もドクンとなって、私は玄関を振り返る。

 深呼吸をゆっくりとして、静かにドアまで歩いて行った。

 覗き穴で確認して、チェーンと鍵を開る。