顔がほてってきたのが判ったけど、何てことない声で言った。
「嫌だって言ったら諦めます?」
『―――――次に乞うご期待』
めげないってことだよね、それ。と思ったら可笑しかった。
「ふふふ・・・。どうぞ、狭い部屋ですけど」
『え、いいの?』
驚いた声が飛び込んできた。自分で言っておいて、なぜ驚くのだ。私は何度か瞬きをした。・・・・この人、私を抱いたのと同じ男よね?繊細な問いかけや反応にビックリする。
「私はもうご飯も済ませたんですけど・・・。簡単でよかったら、何か作ります」
『・・・・』
反応が面白くて笑いながら言うと、返答がなかった。
「桑谷さん?」
『・・・・いや、感動して。ありがとう。すぐ行きます』
電話が切れて、私はそれをちょっと呆れて見つめた。感動って・・・何を大げさな。
ビールを飲み干して台所に向かった。
食事の用意を始めなきゃ。人のために食事の準備をすることにうきうきしているのを、自分では気付かないふりをした。
約40分後、チャイムが鳴る。
心臓もドクンとなって、私は玄関を振り返る。
深呼吸をゆっくりとして、静かにドアまで歩いて行った。
覗き穴で確認して、チェーンと鍵を開る。



