ある日のことだった。

私が家に帰ると、彼から電話があった。

私は大学生、彼は社会人だからあまり頻繁に逢うことはできない。

彼は私よりも2つ年上だ。

でも、お兄さんていう感じでもない。

私は出会ったときから私とタメのように接している。

彼と頻繁に逢うことはできなかったけど、私は全然寂しくなかった。

きっといつか裏切られる。

私はそう思っていた。

私は最悪な女なのだと思う。

2年近く付き合っていたのに、彼を信じきることはなかった。

怖かった。

信じて裏切られることが・・・。

愛はカメレオンだからすぐに形を変えてしまう。

そのことが私に根深く住み着いていて、いつでも逃げ道を確保しようとしていたのかもしれない。


 「今日泊まっていい?」

電話口からは彼の優しい声が聞こえてくる。

「なんで?」

私はそっけなく言った。

きっと、合う時間が少なくて気を使ってくれたのだろう。

私は理由を聞くのがめんどくさくて、ただ「いいよ」とだけ言って電話を切った。