波を待っていた

だんだんうねり方がわかってきていた

少し大きい波が来そうなので体制を変えパドリングを急いでやった
自分の板が波に乗っているのがよくわかる

すかさず立とうとするにもうまくいかなかった

腹が立つというよりも失敗しているが楽しい気持ちになった

『頑張れ~』

遠くから緒方、和義、洋太がこちらに向かって言っていた

私は喋る事もなく彼等に向かって右手を大きく上げて合図を仕返しした

何度も何度もやっているうちに感覚が掴めてきていた


そしてついにその時が来た

同じようにパドリングをして波に乗りタイミングを計って立った

両手を広げてバランスをとりながら前を見ていた

時間にしたら一、二秒でしかないのに長い時間乗っているような感覚になった

板の上から見る光景はまた違う物だった

板の上に乗る事ができる人だけの光景だった
なんともいえない気持ちと同時に達成感があった

数秒で転落し浮かんでいると和義が近付き

「やったじゃん!」

といい私は

「これおもしろいな」
とただそれだけを言った