少しの間の時間だった
時間にすれば三十分位だろうか

私にとっては既に何時間も経過している感覚だった

同じところをグルグル、グルグル周りながらただ時間が過ぎていった

私は決心した

他の人には対した事のない出来事であろうが私にしては大事件である

『行くぞ!』

心の中では焦りの自分と葛藤していた

私なりに自然な顔をしているつもりだった

仕草も不自然なほど自然だった

『ヤァッ!』

握りました

女性の手を、彼女の手を握りました

頭の中は真っ白、気分は絶好調であった

若菜は私の手を握り返してくれた

いつ死んでもおかしくないくらいの興奮だった

若菜の手はやわらかくて、小さくてあたたかかった

体は私が大きいが若菜の手のぬくもりで私は全身を包まれているような気分だった

若菜はいつもの勝気な顔ではなくどことなく優しい笑顔で私を見ていてくれていた

私は嬉しさを顔に出せずにブスッとしていた

若菜には全て知られているような感じだった

二人は手をつないだまま道のりを歩いていた

冬に近い秋の私の天使の手はとても安らぎを感じる事ができる手であった…