気がつけば手首に無数の傷跡。
君には見られないように隠し続けた。
だから君にバレることはなくて、
いつも通りの君だった。

私は君の機嫌を損ねまいと毎日
笑顔でい続けた。
でも、一瞬でその努力が崩れ落ちた。

君は、あの仔と抱き合っていたんだ。
なんで?なんで?
やっぱり私は飾り?
なんで?なんでよ?
私、頑張ったんだよ?
一人でいっぱい悩んで、
それでも、
大丈夫。大丈夫って。

なのに、君は楽しそうに他の女と
笑ってるわけ?
信じられないよ。
なんでよ。
どうして?
私、もう要らない?

私捨てられるの?
君に好かれようと努力したのに?
私が道路の真ん中で泣いていると、
私の前まで走ってくるみなれた靴。

「夕凪・・・っ」

君がいた。
私の大好きな君が、
私の名前を呼んでくれた。

「ごめんっ」

”ごめん”。ソレはどう言う意味かは
聞かないよ。
私は黙って頷きながら、
君の胸に顔をうずくめた。
私は一瞬で君の香りに包まれた。
大好きな君の匂い。

でも、
あの仔は決して、
悔しそうな顔をしなかった。
そして、”がんばって”
とでも言うような顔をした。
なんで?
君はあの仔に頷いて
ニッコリ笑った。

「何?何なの?」
「内緒。」

やっぱり君は1人じゃない。
もう一人の君がいる。
ソレは私には見えなくて。
あの仔には見えるのかな?