サクラ

「あ。髪、切った?」

「うん」

「短い方が好きだよ」


わたしが“好き”と言っても、何も突っ込んでくれない。

本当に鈍いんだから……。


わたしは、前を向いた。

いつの間にか、指揮者が立っていた。

指揮者の右手が上がり、伴奏が滑らかに滑り出した。


わたしは、大きく息を吸って歌い出した。


隣から、宏樹の声がする。

時々リズムが崩れるし、音程も微妙。

だから、睨み付けた。

その時の、宏樹のマヌケな顔、忘れない。